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REPORT | メッセージ | 言葉を香りで表現するということ




映画「メッセージ」予告編より



頭に浮かぶことは同時多発的で、それを全部言葉にしていたら、とても時間が追い付かない


それは例えるなら、電車から見える景色全部を、口に出して言うようなこと


一秒間に見える景色を、一秒間で全部言えるか



赤い屋根の家にはその高さを超えるような大きな樹があって横の大きなマンションのベランダには洗濯物と鉢植えがあって(あの花なんだっけなー?)レースのカーテンの窓もあれば段ボールで埋め尽くされてる窓もあって(あ、あんなとこに神社あったんだ!)その手前には〇〇商事と看板のついたビルがあってその角を車が曲がって・・・


頭の中では、見える景色に加え、思考…?や発見…!
レールから伝わる振動音、窓ガラスに触れる温度、シートの匂いなどの感覚
間に合うだろうか?という未来に対する感情や
お母さんと見た景色に似てるな。というような過去の記憶など
ありとあらゆることが、同時多発的に渦巻いている


わたしたちが日常発する言葉は、こうして頭の中で同時多発的に頭に浮かぶ無数の点のひとつで
その点は、いくつもの感情や思考、記憶の支柱に支えられていている

点が言葉で示されたたとき、支柱は言葉に内包され、会解釈は相手にゆだねられる
うまく伝わることもあれば、思いがけない方向に伝わってしまうこともある

言葉とは、同時多発的に頭の中に浮かぶ一部を切り取り、更にそれを点で示す
とても便利なものであるけれど、自分もしくは相手の、思考や感情のすべてではないということ(*1)






五十嵐 大介著「海獣の子供」より





「言葉と香りワークショップ」(*2)にご参加くださった方が持ち寄られた本に

五十嵐 大介著「海獣の子供」があります

その中の印象的なシーンのひとつに


「鯨たちはもしかしたら、見た風景や感情をそのままの形で、伝え合って共有しているのかもしれない。」

(*3)

そんなことができたらどんなにいいか(*4)


香りには、その可能性を感じています


ひとつの香りから得られる情報は様々
小さい大きい、温かい冷たい、早い遅い、明るい暗い、乾いている湿っている
それらを組み合わせることによって
言葉のように具体的に指し示すことはできないけれど
言葉に内包された、頭に浮かぶ無数の点を支える支柱を表現することはできる(*5)
そして、共有することができる

これまで何度も「言葉と香りワークショップ」で涙を流される方をみてきました(*6)
はじめて会った人の、はじめて知る言葉から生まれた、はじめて嗅ぐ香りに思わず感情が動く
その人の人となりや、考えていること、感じていることが、香りから伝わって共振する

自分で創った香りに涙が零れる方もいらっしゃる
言葉に表される点に内包された支柱を、香りを創る過程で自ら見つけ
忘れてしまっていたこと、もしくは新しい扉に触れて思わず共振する


「通じ合う」


香りは、動物の脳、古い脳の奥底にあり
匂いを嗅いだ瞬間、その奥底に香り分子が運ばれ、本能や記憶に触れ、感情を揺らす


言葉にかわるそんな伝え方もあるのではないか?


双子座の新月の夜に観た、映画「メッセージ」から思考を辿り、今、こんな果てにいます









*1:
頭の中で起こっていること、すべてを話す必要はないと思いますし
言葉には、過去も現在も未来も繋ぎ、またはそんな時間の流れから解き放ち
まるでそこにあるかのような感覚や、自分ではない誰かになれるような力をもたらす作用があると思います

言葉なくして思考はありえない
言葉はすごく大切なものだと思っています



*2:
言葉と香りワークショップ」とは好きな言葉から、香りを創るワークショップです
詳細はこちらよりご覧ください(6/24開催お申込受付中です) >> http://sousleneznews.blogspot.jp/search/label/WS%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%A8%E9%A6%99%E3%82%8A


*3:
この作品の中の仮設かもしれません
気になっていろいろと調べてみたのですが、よくわからないのです
もしどなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、お話を聞いてみたいです



*4:
感情がそのまま共有されたら、不具合もあるかもしれないけど
それは、ただ「合う」「合わない」という差であって、違う場合には受け流せばよいのだと思う(できるかできないかはさておき)
ありのままの自分をそのまま出せるのであれば、自分を生きることができるような気がしています



*5:
言葉そのもので表現することもできるし、香り以外にも色んな術があると思います
それが ART と呼ばれるものなのかもしれません



*6:
この会の目的は、涙することではありません
大笑いで、あー楽しかった!で終わる会もあります
ただ、思いもよらず零れてしまう場面に出会ったり
自分自身もよくよく知っている香りに、ふと涙すると
香りの語りかけてくる力に、圧倒的なものを感じることがあります





…と、書いているこれも、頭に浮かぶ点のひとつに過ぎない
言葉はどこまでも果てがなく未知で、動き続ける宇宙の様
切っても切れない。ずっとそばにある、永遠に自分を映す鏡